その言葉を聞いた時、僕の脳裏に木村先輩が現れた。もちろん、彼女は恋人ではない。それなのに、彼女のことを考えてしまったのだ。

 そんな自分に、心が動揺してしまう。それを悟られないように取り繕ったからだろうか。少し声が大きくなる。


「い、いないよ」


 奈緒の顔がパーッと明るくなった。まるで夜の街のネオンのように、どこまでも人工的に作られた明るさだ。