食べ物が口に入ったまま、奈緒が喋り始める。


「映画、本当に良かったよ。すごく感動して、泣いちゃった」


「僕も感動したよ。鎌倉のシーンが特に最高だったね」


 奈緒が泣いていたことに全く気がつかなかった。確かに言われてみれば、目がちょっと赤い気もする。

 その後、映画の話で盛り上がったが、僕はあまり楽しくなかった。いくら楽しかった映画の話題だとはいえ、どうしても彼女と話していると疲れてしまう。