「大丈夫だよ。私も来たばかりだし」


「それでも、待たせちゃってごめん」


 声までも、なんだか嘘くさいくらい上機嫌だ。それでも、怒られて空気が悪くなるよりは良い。

 なにはともあれ合流できたので、映画館に向かった。発券機の前まで着くと、すぐにチケットを出して奈緒に渡す。


「ありがとう。映画、楽しみだね」


 僕が知らない高そうなパスケースの中に、奈緒はチケットを入れてそのまましまった。その姿を見て、善斗くんが前に言っていた言葉が蘇る。