「え?」


 きょとんとする僕を、木村先輩は真っ直ぐ見ている。


「斎藤くん、私が死ぬことを認めたくないって言ってくれたよね。そんなこと言えたのは諦めない強さと、逃げない優しさがあるからだよ。勉強なんて出来なくても、斎藤くんにはいいところたくさんあるよ」


 なんて返したら良いのかわからず、少し間を置いてから「ありがとうございます」と言った。木村先輩は、何も言わなかった。