焦りとは裏腹に、さらに信じられないことが起きた。目の前にいる人達が、薄くなり消えてしまったのだ。首を動かせないため全体は確認できないが、少なくとも僕の視界は誰もいない映画館になっている。

 もはや身体の異常などではない。今起きていることは超常現象だ。夢でも見ているのだろうか。いや、確かにこの小さな映画館は「ドリーム・シネマ」という名前であるが、間違いなく目は覚めている。信じられないが、紛れもなく現実だ。