木村先輩は善斗くんとの関係にも言及せず、僕と彼の関係についても特に聞いてこなかった。それさえも気にならないくらい、ありがとうと言われたことに心が満たされていく。

 目を閉じてみる。

 木村先輩の笑顔がまぶたの裏に焼きついているようだ。また、鼓動が速くなってきた。耳が熱くなる。

 僕の中でなにかが芽生えようとしていた。