なにも言わずに彼女は受け取ると一口だけ飲み、僕と目も合わせずに言った。


「……早く帰りなよ」


 淡々とした木村先輩の声が、僕を突き放す。いくら具合が悪いとはいえ、さすがにこの言い方はないだろう。

 あまりの冷淡さに、先ほどとは違う恐怖を感じた。それでもまだ、見捨ててしまう恐怖の方が勝っている。見捨てられる苦しみを、誰よりも知っているからだろうか。