木村先輩はそんな僕をまっすぐ見る。


「気にしなくていいよ」


 短い言葉ではあるが、不思議と少しだけ罪悪感が薄れた。

 母親の死を話す時でさえ、木村先輩は口調も表情も変えない。表情の変化に乏しい彼女を、最初は冷たい非情な人だと思っていたが、今はいつも同じでいられる強さを持った穏やかな人だと思えるようになった。