『斎藤くん、今日はとっても楽しいね』


 思い出したのはいいことだけではなかった。神社から帰る道の凍てつく寒さと、素朴な黒髪の笑顔がフラッシュバックする。まるで、傷口が開いたようだ。

 ずっと、忘れようとしていた。やっと、思い出さなくなっていた。それなのに、なぜよりにもよって今なのだろうか。