考え事をしていて気がつかなかった。木村先輩が教室からこちらへ来ていたのだ。二人は話すのをやめて振り返る。


「あぁ、ごめんごめん。俺らはもういくから」


「じゃ、そういうことで」


 僕の方を見向きもせずに、二人は廊下を小走りで去っていった。


「ちょっと、こっちに来て」


 木村先輩は何事もなかったかのように、呆気に取られている僕を教室へと招き入れる。教室中の視線が僕達に集まったが、一瞬で誰もが目を逸らしてしまった。