俺の友人の拓也は、よくオリジナルのゲームを作成している。
俺は翔、高校二年生だ。高校生にもなると、小さい時のように鬼ごっこに夢中になったりすることもなければ、みんなで
テレビゲームにかじりつくということもなくなった。そんな俺の楽しみが、拓也が作るゲームだ。拓也のゲームは、いわゆる
アナログゲームが多い。カードゲームだったり、トークゲームだったりする。
どのゲームも独自のルールで面白く、次はどんなゲームになるのだろうかと友人同士で話していた。すると、拓也がやってきて
言った。
「今度は、ボードゲームを作ろうと思ってるんだよね」
ボードゲームか。ボードゲームと言われれば、人生ゲームを始めとして様々なものがある。だが、はっきり言ってしまえば
もう飽き飽きしていた。それでも拓也が作ってくれるものなら楽しいかもしれない、という期待もあった。カードゲームだって
トランプやUNOなど様々やってきたが、それでも拓也オリジナルのカードゲームは面白かった。
「ボードゲームだから、作るのにはちょっと時間がかかっちゃうんだけど、待っててくれよな」
そう言って、拓也はいなくなった。焦らせるつもりはない。待っている間は別のゲームでもして遊べばいいのだから。
そんな話をもらってから数週間後、拓也が話しかけてきた。
「この間、ボードゲームを作るって言ったじゃない?あれ、ちょっと今どうしようかと思っていて」
「どうしたの?何かあった?」
「いや・・・」
そう言って、口ごもってしまった。何か作る上での問題があったのだろうか。出来ることなら作ってもらいたいという気持ちは
あるが、それでも嫌々作ってもらう必要はない。そう思ったので、素直な気持ちを伝えた。
「趣味で作っている拓也がつまらないんだったら、無理しなくて大丈夫だよ。今まで作ってくれたゲームでも十分楽しいし」
「作るのはすごく楽しいんだよ。でも・・・」
「でも?」
「ただのボードゲームじゃつまらないから、イベント的なものを作ろうと思ったんだけど、思った絵が描けなくて・・・」
どうやら、不満は絵のようだった。
「それなら、俺が描こうか?」
「え?良いの?」
「もちろん良いよ。あ、でも、ゲームの内容は知らせないでくれよ?俺はあくまでも、拓也がこんな絵が欲しいって言ってくれた
ものを描くだけだからさ」