ブラウンの手料理は、今まで何度も味わってきたが、その度に三日間、トイレから出てこられなくなる。ブラウンの料理の腕前は、殺人級なのだ。カナソードが料理好きだというのは、実は嘘である。本当は、料理をするのは、面倒臭いと感じている。
しかしブラウンの手料理を食べたくない一心で、料理好きという事にしているのだ。

森から家へと帰ってきたブラウンは、家の前にあるポストを確認した。いつもならカナソード宛の手紙がほとんどか、たまに剣術道場に入門したいという入門志願者の子供の親からの手紙が入っている。あるいは空か。しかし今日は、いつもと様子が違った。中には一通の封筒が入っていた。ブラウン・シュガー様と書いてある。

「私宛の手紙?」

差出人の名前を見ると、メープル・シュガーとなっていた。

「メープル・シュガーって……。私のお姉ちゃんの名前だよね」

ブラウンは、その場で手紙を開けて読んだ。

ブラウン・シュガー様。
初めまして。突然手紙を受け取ったあなたは、とてもビックリしている事だと思います。私はメープル・シュガー。あなたの姉です。
私に妹がいる事は、小さい頃の記憶だけど、よく覚えています。
ふとあなたの事を考えます。妹は、どんな子なんだろう。
妹に会ってみたい。たくさんお話してみたい。そう思うようになりました。
それで思い切って、この度手紙を書く事にしました。
ブラウン。あなたはどうですか?私に会いたいですか?
私はラウネリアの街に住んでいます。ラウネリアに来たことはありますか?
大きな町で景色も綺麗な良い町です。私が育ったこの街を案内しながら――。
ブラウン、あなたの事もたくさん教えて欲しいです。
そしてお母さんが残してくれた形見をあなたに渡したいのです。
是非、一度会ってお話してみたいです。
私の住所を書いておきます。気が向いたらいつでも来てください。
あなたの姉、メープル・シュガーより。

メープルからの手紙を受け取ったブラウンは、鍋を手に持って料理をしているカナソードに手紙を見せた。

「父さん。今ポスト見たらね。メープル・シュガー。私のお姉ちゃんから私宛に手紙が届いたの」
「ええ?メープルから手紙?」
「うん。私がどんな子なのか気になるから会ってみたいって。お母さんの形見も渡したいって」
「形見だと?それは俺は聞いたことないが……。お前はどうしたいんだ?」