「記憶操作の魔法の防御魔法。記憶操作の魔法は、名をミストと言うの。意味は霧。記憶に霧がかかって違う現実を見せる魔法。昔、スケベな男の魔法使いがいたらしくてね。自分にミストをかけて妄想を本物の記憶にしてしまおうと考えた。自分の欲望を満たす為に、その生涯のほとんどをかけて開発したくだらない魔法よ。最低……。ほんと最低ね。これだから男ってのは……。だから自分にかけて自分だけが解ければいいと考えたの。ところがミストを他人にかけて悪用する者が出てきたの。そこで他人からの記憶操作に対する防御魔法が開発された。ミストは、私の祖母の時代に禁術になった魔法。だから祖母も禁術魔法だから、私にミストを教える事ができなかった。まあ別に必要はないのだけど。私は幼い頃、祖母から記憶操作の魔法の防ぎ方だけ教えてもらって理解した。もしミストの魔法を教えてもらっていれば、解き方の研究も出来たかもしれないけど、記憶操作された魔法の解き方は知らないわ」
「ジャガリーさんのお婆さんも魔女だったんですか?」
「ええ。私の家系は代々魔女なの。……話がズレてしまったわね。ミストの防御魔法。ミストを他人にかけるというのは、呪いと同じ。つまり闇属性魔法ね。それに対抗する属性は光。光属性で闇属性への防御魔法をかけることが、ミストの防御魔法につながるの」
「光属性……ですか」
「さて光属性は、どんな力が必要だったかしら?」
「深い愛の力?」
「そう。深い愛の力。ブラウン。あなたの大切な人の事を心の中で思い浮かべてみて」
「大切な人……。父さん……」
「さっき話してくれたカナソードさんね?」
「はい」
「じゃあ次にカナソードさんと過ごした楽しい日々の事を心の中にイメージしてみて」
「楽しい日々……。剣術の修行をして……それから一緒にご飯を食べる……」

ブラウンの体の周りに白色のオーラが漂ってきた。

「ブラウン。今、どんな気分?」
「とても暖かい気持ちです。とても落ち着いています」
「そう。それが光属性をまとった時の感覚よ。その感覚をよく覚えておいて」
「はい」
「次に自分の体全体に光の膜を覆って包み込むイメージを持ってみて」
「はい」
「ラップって唱えて」
「ラップ」

ブラウンの体の周りについた白色のオーラが、体の中へと入って消えた。

「……よしっ。もう大丈夫よ」
「はい」