「ジャガリーさん。今日の夕食なんですけど、私が作ってもいいですか?お世話になるし、料理くらい私がしようかなって」
「あら、そう?やってくれるの?じゃあお願いしようかしら。材料はそこに色々揃えてあるから好きに使ってくれていいわ」

ブラウンは、台所で料理作りを始めた。

「何を作ってくれるの?」
「シチューです」
「そう。じゃあ私は部屋で作業しているから、出来たら呼んでくれるかしら」
「はい」

ブラウンは、張り切って料理を作った。
父であるカナソードに負けない料理を作ろうと頑張った。
そしてそれは完成した。

「ジャガリーさん。ご飯できました」
「そう。今行くわ」

リビングに着くと、物凄い異臭が漂ってきた。

「ん?なんか焦げ臭いわね」
「そうですか?まあ料理してたらいつもこんなものですよ」
「そ、そうかしら……」
「はい、どうぞ。シチューです」

ブラウンがシチューと言ったそれは、とても黒かった。
まるで闇のように黒い漆黒の色をしたスープだった。

「…………う、うわぁ。……い、色々と凄いわね」
「さあ冷めないうちに食べましょう」

ブラウンは一口目を食べる。

「うん。美味しい」
「あら。見た目の割に案外平気なのかしら。どれどれ……パクッ」
「味の方は、どうですか?」
「とても……個性的な味ね……。うっ……」
「あれ?ジャガリーさん?」
「………ごめんなさい。ちょっとお手洗いに」

それからジャガリーは、三日間トイレから出てくる事はなかった。
ブラウンの料理は、普段は激マズな薬草を食べ慣れている魔女でさえもトイレに三日間閉じ込める事ができる最強の料理なのである。

「ジャガリーさん。体の具合はどうですか?」
「え、ええ……。なんとか……。ブラウン、あなた、料理をする時に味見はしないの?」
「私、料理では味見しないんです。だって美味しいかどうかは、一緒に食べる人と同じタイミングで美味しいって感動したいから」

キラキラした表情で真面目に語るブラウンに、ジャガリーは何も言えなかった。そういえばあの料理と呼べない代物を食べても平然としていた。味覚も個性的なのかしらとジャガリーは思った。ジャガリーはもう二度とブラウンに、料理をさせるのはやめようと思ったのであった。