「事情は分かったわ。それともうひとつ。教えて欲しいのだけど、あなたが寝ている間に私は、あなたの体に触れたのだけど、あなたには記憶操作の魔法がかけられている。何か覚えはあるかしら?」
「いいえ」
「記憶操作の魔法はね。ロストマジック。過去に禁術となった魔法なの。あなた、魔女に知り合いはいるかしら?」
「いません」
「そう……。おかしいわね。こんな高度な魔法をかけられる魔女は、そんなにいないし術者は限られてくるはずだけど……。あなたの言う赤い屋根の家はね、数年前から空き家なの。そこには、確かにあなたの言うように以前は、三人家族が住んでいた。でもある日突然、三人とも行方不明になったの。でもあなたは、ラウネリアに来て、あの赤い屋根の家で数日間過ごした記憶がある。この記憶の違い、おそらくあなたにかけられた記憶操作の魔法が関係しているのではないかと思うの。あなたは、おそらくラウネリアに来てから誰かに記憶操作の魔法をかけられている。そして偽りの記憶を見せられた。もしそうならば数年前から空き家であるあの赤い屋根の家とあなたの話のズレに説明がつく」
「その記憶操作の魔法を解く方法はないんですか?」
「残念ながら記憶操作の魔法を解くには、術者が解くしかないの。自力で記憶を取り戻す事はできないわ。だから禁術に指定されているの。使い方次第でとても危険な魔法になるから。でも記憶操作の魔法をかけられるのを防ぐ防御魔法ならあるわ」
「そうなんですか……」
「ねぇ。ブラウン。記憶操作の防御魔法、やり方を教えましょうか?もしもまたあなたに記憶操作の魔法をかけようとしていた人物が近づいてきた時、それを防ぐことができるようになるわ。あなたの体を触れた時に分かったの。ブラウン。あなたには、魔法の才能が眠っている」
「はい。是非お願いします」
「そうと決まれば今日からここに泊まっていって。空き部屋はあるから好きに使ってくれていいわ」
「よろしくお願いします」

こうしてブラウンは、記憶操作の防御魔法を学ぶため、ジャガリーの元で魔法を学ぶ事になった。