私は文系の大学、紗香はファッション雑誌の編集者になるためにアパレル系の大学に進学し、二人とも現在は一人暮らし。毎月かかる生活費を見る度に気分が駄々下がりの毎日。大学は楽しいけれど。
「伊代、おはよう。」
毎朝そう声をかけてけてくれるのは、もう紗香ではない。私には、彼氏がいるのだ。同じ年の彼は小説が好きで、文章について学びたいことがあるらしい。たまたま、席が隣になって話すようになり、告白されたというわけだ。こんなにも、優しい人が隣にいるというのに私は未だにあれきり一度も話さなかった彼の姿が忘れられないでいた。
「伊代、今日の授業が終わってから一緒にご飯でもどう?」
「ご飯代が浮いて助かる。」
「奢ってもらう気満々だな。」
そういう会話をしつつも、彼はいつも私に贅沢をさせてくれる。私は単純に彼のことが好きだと思う。
授業を終えて、彼が予約したと言われるレストランへ向かう。いつもは、ファミレスで済ませることだってあるのに、今日は少し高級なフレンチレストランだった。一番安いメニューを注文する。ここばかりは贅沢していられないと言うくらい、一人暮らしの大学生にとっては厳しい値段だ。
目の前にある料理は、正直とても美味しかった。素材の味が生かされていて、全体が上手く纏まっている。ついでに、と彼が二人分のデザートを注文してくれたのでそれを待つ。
来たのは、フルーツタルトとバニラのアイスクリームだ。色とりどりのフルーツで全体が彩られている。
「伊代。」
食べようと、フォークを取りだしたところで急に真剣な表情になった彼に私も驚く。
「僕と、これからも一緒に生きていきませんか」
椅子から降りて膝まずき、取り出したのは指輪。心臓が今までにないくらいの音をたてている。一気に顔が紅潮する。周りの人の存在や、気配が一瞬にして消えてしまったようだった。
「よろしくお願いします。」
指輪を受け取って言った。彼は私を抱きしめた。石鹸の香りが心地よかった。周りから拍手が起こる。「兄ちゃんよくやった!」「おめでとう!」と、知らない人からも歓声を浴びて恥ずかしいがそれ以上に嬉しかった。私は、若くして結婚を決めたのだ。
今この瞬間、やっと私の中の太陽のような存在の彼が過去になったような気がした。色の濃い高校生活。それを背にして、生きていくのだ。
ありがとう、龍也。
空にあった視線を目の前の彼に戻した。
「伊代、おはよう。」
毎朝そう声をかけてけてくれるのは、もう紗香ではない。私には、彼氏がいるのだ。同じ年の彼は小説が好きで、文章について学びたいことがあるらしい。たまたま、席が隣になって話すようになり、告白されたというわけだ。こんなにも、優しい人が隣にいるというのに私は未だにあれきり一度も話さなかった彼の姿が忘れられないでいた。
「伊代、今日の授業が終わってから一緒にご飯でもどう?」
「ご飯代が浮いて助かる。」
「奢ってもらう気満々だな。」
そういう会話をしつつも、彼はいつも私に贅沢をさせてくれる。私は単純に彼のことが好きだと思う。
授業を終えて、彼が予約したと言われるレストランへ向かう。いつもは、ファミレスで済ませることだってあるのに、今日は少し高級なフレンチレストランだった。一番安いメニューを注文する。ここばかりは贅沢していられないと言うくらい、一人暮らしの大学生にとっては厳しい値段だ。
目の前にある料理は、正直とても美味しかった。素材の味が生かされていて、全体が上手く纏まっている。ついでに、と彼が二人分のデザートを注文してくれたのでそれを待つ。
来たのは、フルーツタルトとバニラのアイスクリームだ。色とりどりのフルーツで全体が彩られている。
「伊代。」
食べようと、フォークを取りだしたところで急に真剣な表情になった彼に私も驚く。
「僕と、これからも一緒に生きていきませんか」
椅子から降りて膝まずき、取り出したのは指輪。心臓が今までにないくらいの音をたてている。一気に顔が紅潮する。周りの人の存在や、気配が一瞬にして消えてしまったようだった。
「よろしくお願いします。」
指輪を受け取って言った。彼は私を抱きしめた。石鹸の香りが心地よかった。周りから拍手が起こる。「兄ちゃんよくやった!」「おめでとう!」と、知らない人からも歓声を浴びて恥ずかしいがそれ以上に嬉しかった。私は、若くして結婚を決めたのだ。
今この瞬間、やっと私の中の太陽のような存在の彼が過去になったような気がした。色の濃い高校生活。それを背にして、生きていくのだ。
ありがとう、龍也。
空にあった視線を目の前の彼に戻した。