あれから数か月が経った。
俺は無事に勉強へと身体を向けられた。高校野球に未練はあるものの、それは後輩に託した。俺だって先輩に託されてきたのだから、その思いを紡いでいく。
今は別の勝負に挑んでいるのだから。
そして、あれだけ敗戦続きだった佐々木たちは、秋の大会で大健闘をした。
県大会で好成績を残し、地区大会まで出場した。それは一回戦で負けたものの、わが校始まって以来の戦績だという。歴史を変えたのだ。
その功績を称え、県の二十一世紀枠、つまり甲子園の可能性を繋いだ。
そして俺は今、ある場所に向かっている。
大勢の受験生が集い、試験を受ける会場に。
俺も今、未来を決める分岐点に至る勝負に挑もうとしているのだ。
会場の門の前で足を止める。
大きな会場、大学はごおごおと威圧感を放ち、まるで何かの城にいるかのようだった。しかしそれはきっと自分の緊張から由来するものだ。
大丈夫、自分を信じて。高校野球の経験が、きっと自信となって自分を支えてくれるから。
ふぅと一つ深呼吸をして、頷いた。うん、大丈夫。
そして一歩。踏み出した。
未来へ――。