ピーンポーン

「はーい」

「先程は失礼しました。
取りに引っ越してきた菊井 陽凪薫と言います。
つまらないものですが……。」

「あら、そんな物いいのに。
澄麗ったらね、今日は饒舌になっちゃって
あなたに一目惚れしちゃったりしてね。
なんてね。
さぁ、あがっていって。夕飯たくさん作りすぎちゃったから。」

「いえいえ、そんな。」

「いいからあがってちょうだい。ね?」

「はぁ。」

あ、いい匂いがする。これはカレーだ。
この甘い匂いからして甘口!
大好物だ。

「失礼します。すみ、い、和泉さんのお義父さん。初めまして。隣のアパートの203号室に越してきた菊井 陽凪薫と申します。よろしくお願いします。」

「君にまだ、お義父さんと呼ばれる筋合いはない!


いや、すまないね。気にしなでくれ。」

「やーね。あなたったら。初めての澄麗の男友達だからって意識しすぎよ。澄麗と菊井くんなんて出会って初日よ?

匂いで分かってるかもだけど、今晩のご飯はカレーと唐揚げなの。ほら、沢山あるでしょ?おかわりもしていってちょうだいね。」

こ、この唐揚げはカレー味!?
しかも2度揚げされてあるから外はカリカリ、中はジューシーそこにこっちのカレーは少しピリ辛だからいいアクセントになってる

マヨネーズをつけるとまた美味!
辛味が少しまろやかになりなんという絶妙なバランス!

中に入っている具材は玉ねぎ、にんじん、じゃがいも、ピーマン、そして牛肉。

カレーも野菜ゴロゴロのお袋の味で、牛肉!
薄く切られた牛肉にトロッとしてるカレーがよく絡みついてきて、じやかがいもはホクホクで、これはメークイン。

玉ねぎは弾力のまだ少し残るものと恐らく飴色になるまで炒めただろう2種類。

にんじんとピーマンはどちらも独特な味がなく食べやすい。



「「「「ごちそうさまでした」」」」


「また、いつでもおいでね。困ったことあったら聞いてちょうだいね」


   *


 ピーンポーン

「菊井です。す、い、和泉さんと一緒に学校に行こうと思って来ました。まだ道になれないので教えてもらおうかと…。」

 …ガチャッ

「私、今日は休む!」
 バタンッ!

やっぱりかぁ……。

   *

「あのね、わ、わわ私、ふ、、不登校なの、、、。」

「そうなんだ。

一緒だね。僕も今不登校なんだ。」

唐突なカミングアウト。
理由を聞けばまぁ、、色々とトラウマがあったらしい。

僕も小学校の頃にトラウマがあって、その状況に似てきたから不登校になったんだったな。

「え?そう、、なの?
ヒナタも不登校だったんだ。
“勉強命!”って感じで、
学生なんだから勉強することが仕事だよ。
行かないと。

とか言われると思ってたよ笑
安心したぁ〜。」


   *

「でも、澄麗。今日は体育祭の競技決めの日じゃなかったっけ?変な競技させられちゃうじゃん?それが終わったら早退してもいいから一緒に行こ?ね?」


「、、うん。それなら、、、。」


やっとのことで了承してくれた。


   *

1時間目 学活

「今日は約1ヶ月後に迫った体育祭の出る種目を決めていくわよ。
そうねぇ、、、まず、いつも決まらないリレーから決めましょうか。
走ってくれる人〜?」


シーン


やっぱ誰も手をあげない…か。
あげたくないなぁ。

「じゃあ、先生の独断て決めちゃいましょ!
それが嫌なら手を挙げなさい。
選ばれるかもよ?

もし、今、手をあげたら少しかっこいいわよ」

ここは澄麗にアピールできるチャンス!
手をあげるか!
うん、、チョロいなじぶん。

「はい!僕やります!中学の頃の部活は文化部で走りに自信はないですが澄麗にアピールするため、頑張りたいと思います!」

「おっ、なかなかやるね転校生くん。
実はあてようとおもってたんだよね〜。

ほかの男子!非リアの運動部員!
今こそ立ち上がるときだ!モテ期、逃していいのか!?優勝目指すぞ!」

「「「「「「「「「「オォーーーー!!!!」」」」」」」」」」

「てことで、リレー走る人が多い感じだから
放課後オーディションね〜。

じゃあ女子も決めちゃいましょっか♪」

   *

「結局1日残った挙句、リレーも走らされるの!?
ひぃぃなぁぁたぁぁぁ!?」

「ごめんって。澄麗があそこまで速いと思ってなかったし、オーディションとか聞いてなかったし、でも、ほんとごめんね。
でも、これから放課後一緒に練習だねっ♪」

「呑気か!!!

ま、まぁ、親には怪しまれずにぃ、
一緒にいれるのはいいけどさぁ、、、。

ね、しかもさ、、本当は何かやってる?
陸上部相手に勝ってたじゃん。

実は、あの子学年1速いって言われてる子だよ?負けず嫌いだし執念深いって噂だから気をつけてね。」

「りょうかい!」


   *

なんでこうなったんだろう

え?隣なんだから窓開けて会話とかしたいじゃん?

まぁ、流石に親に怪しまれるかぁ……。

「そういえばさ、、、幻滅とかって、、してない?」

「なんでそんなこと聞くの?
するわけないじゃん。好きだよ。
“安心して”って言葉だけじゃ安心できない。でも、安心して欲しいな。ごめん矛盾してるよね。


私のこの眼に嘘がないこと解って欲しい。
っていっても、目は今見えないか笑

じゃあ、おやすみ。またあしたね。」

「うん、おやすみ。あ、明日は休むね。
私も好きだよ。
私もこの眼に嘘はないよ。」

「りょうかい。じゃあまた明日、電話で。」

   *

今日は一人で登校か。気をつけないとな。

「よぉ、転校生くんよぉ。よくも赤っ恥彼女のノガミの前でかかせてくれたじゃないか。あぁ?
そして、今日はおひとり様でちゅかぁ?
あらら彼女さんに嫌われちゃいましたかね?



とりあえず、テメェ、ちょっとツラ貸せや。」

「葛野くんおはよう。そろそろ行かないと。予鈴なってるよ?
さすがに指導されるのは嫌だよね?
内申下がるし。」

「チッ。覚えとけよ。」

ふぅ、何とか助かったけど早速絡まれるとは……。気をつけないと。

ん?てがみ…?

こうならないようにみんなの前でアピールしたのになぁ……。

ー転校生。菊井。
うちの彼氏より断然かっこいいじゃん!
うちの彼氏になって欲しいなぁ。
うちって、尽くすタイプなんだよねぇ〜。今、うち募集中やし!
とりあえず放課後体育館裏に来て♡
いつまでも待ってるねっ♡
野神ー

はぁ、野神さん?どっちにしろめんどくさいことになるな。

“そもそも彼氏よりかっこいい”の後に
“募集中”って矛盾してるじゃん。

グルだったら、葛野くんにいじめられるかも…。グルじゃなくてもいじめられるかもしれないな。

でも、澄麗には流石に言えない……よな。

   *
放課後。

「よぉ、また会ったなぁ。
俺の野神に何してくれてんだ?あぁ?
これは責任とってもらわないとなぁ!?

そうだ、プレゼントやるよ。ほらよっ!」


  バシャァァッッツ!!

やっぱりか……。グルだったな。

これからどうするかぁ…。濡れて帰っても親が心配……する訳ないや。
そういや、一人暮らしだった。山川先生に迷惑かけたくないしうぅぅっ。流石にまだ9月初めでも水被るとさむいなぁ……。、このまま帰るかぁ。


うぅぅっ。流石にまだ、9月初めでも水を被ると寒いなぁ…。

と、とりあえず体育祭まで頑張らないと…。

その後は……ごめん。無理かも。

「ハァックションッ!」

明日は絶対風邪ひくな…。

家帰ったら風呂はいったら電話かけよ。




着いた。


「ただいま。

まぁ、誰もいないんだけど。」

シャワーでいいや。沸かしてたら絶対風邪ひくから。



「くぅっ。あったけぇ。やっぱり凄いな文明利器。蛇口捻るだけで温かいお湯が出る。」


よしっ。もしかしたら風邪ひかないかも。



プルr 『ただいま電話に出ることができません。通話中です。』

 ブチッ



え…?つ、つうわ、、ちゅう。

何も聞いてない。“また”嘘つかれて裏切られる……のか…………。

そ、そうだよね……。あんなカップル宣言嫌だったよね。

そ、そもそもネット恋愛だもんね。
どこの馬の骨かも分からない人、好きになるわけない…か。

私なんかみんなの前で猫かぶってるし、
通話と印象違ったのかな。

顔も思ってたのと違ったかも…。


   *

これは初めて付き合った彼女とあったお話。

そう、いわばトラウマといえるもの。

好きだった。
離れ離れになってしまうから告白することにした。

だけど、そのせいでこんなトラウマが残るとは夢にも思わなかった。

その時相手はOKしてくれた。

嬉しかった。

だけど通話もしてくれない。

好きとも言ってくれない。

返信が2、3日返ってこないなんてザラだった。

おかしいなって思ってたら、

『お前、まだあいつと付き合ってんの?w
おもろすぎでしょww
別に好きで付き合ったとかじゃなくて遊ばれてんだよww

いい金づるにされててよかったでちゅねww』


   *


そう、これがトラウマ。だから、何も言われないでこっそり(?)他の男(?)と通話してて。

これって、、浮気?


とりあえずもう寝よ……。

  プルルルル プルルr

「はい、もしもし。どちら様でしょうか?」

「どちら様、、、って私だよ〜。澄麗だよ〜
もしかして寝おき?笑」

そそ、昨日通話出来なくて萎えてそのまま寝てたから寝起きだね。
もう6時27分か。


「そうだね。寝起きだよ。
だって昨日電話かけたら『通話中』って言われたからね。そのまま寝たわ。浮気?
誰なの?もしかしてお遊びで付き合ってる?」


「そんな言い方ないじゃない!
友達の相談乗ってただけなのに!
何も知らないで!

あそびなわけないじゃん、、、。
私はこんなに好きなのに、、、、。」

「ごめん。トラウマがって……。」

あれ?どんなトラウマだっけ?
まぁ、トラウマ忘れられたんだからいっか。