三年最後の試合なら、確実に強いメンバーを選出しなければならない。それなのに中途半端で選ばれた理由も分からない俺がレギュラーにいるのが不思議でならなくて。

 練習に身が入らなくなる。

 その疑問は、次第に膨らんでゆき。

「……まき、小牧」

 おもむろに聞こえた声にハッとすると、俺の前にいたのは監督だった。

 ──やばい、咄嗟にそう思った。

「なに、ボーッとしてるんだ。体調でも悪いのか?」

 急に尋ねられて反応に追いつけなかった俺は、え、と困惑するが、

「あ、いえ…そういうわけじゃないです」

 すぐに否定をするが、心臓はバクバクと嫌な音が鳴る。

「じゃあどうしてボーッとしてたんだ?」

 どうして、ってそれは。

 瀬戸と監督が話していたのを見ていた、とは口が裂けても言えないし。そんなこと言ってしまえば余所見していたのは確実で、練習に身が入っていないことになる。

「……他のメンバーのシュートを見て学んでました」

 咄嗟についた嘘は、するりと現れる。

「シュート?」
「は、はい。俺、あまり得意じゃなくて……だからうまい人のフォームを確認してました」

 たしかに俺は、シュートはあまり得意ではない。十本中三本くらい外してしまうときがある。

「そうかそうか。それはいいことだ」

 けれど、だからといってそんな嘘をついた自分に、罪悪感がぶわっと身体の中に煙のように現れる。

「フォームが崩れたり余計なことを考えて精神が緩んだりすると手元が乱れるからなぁ」

 真剣にアドバイスをくれる監督に、申し訳なくなって思わず目線を逸らしてしまう。

 俺はシュートが完璧ではない。

 それならなぜ、監督は俺を選んだんだろう。

 シュートがうまいやつは俺じゃなく、瀬戸だ。あいつはとにかくフォームが綺麗だ。ボールが宙を舞うとき、綺麗に弧を描く。まるでゴールに引き寄せられているかのように、そこに真っ直ぐと落ちるのだ。

 瀬戸が今回もレギュラーに選ばれるべき人間だ。

 それなのになぜ──…

「小牧は、動きはいい」

 不意に、そんなことを告げられて、え、と困惑した声を漏らしていると、

「周りもしっかり見えていて相手の動きも把握している。自分がどのように動けばいいのか理解できている。だから団体戦が得意だ」

 褒められて、少し嬉しくなった俺はボールへと目を落とす。