結局最後はこうやってレギュラーとは全く無関係な話にたどり着いてしまう。あまりにも無駄話が長くなったせいか話に飽きて離れていったクラスメイト。中には「ああ、またか」と呆れたように笑うやつもいた。
その様子を確認して、ようやくホッと安堵すると肩の荷が降りた気がした。
「まーでもさぁ、小牧がレギュラーってなんか鼻高々だよな!」
過ぎ去った話題をまた引き戻されて、困った。
「なんでだよ」
こいつ、いつまで俺のこと煽ってんだよ。
いい加減、レギュラーのこと忘れろよ。せっかく大人しくなったのにまたクラスメイトが集まってきたらどうするんだよ。
「だってこの学校、バスケとサッカーの強豪校じゃん。そのレギュラーに選ばれるってすげーことなんだぞ!」
たしかにその通りかもしれない。俺だっていまだに信じられない部分もある。「あー…」それには納得の俺も同調すると、「だろ?!」と肩を組んでくる。
鬱陶しくて追い払うと、
「だからぁ、俺は小牧の友達として誇らしいぜ!」
今度は腕組みをして、うんうんと首を縦に振った。
「なんだよ、誇らしいって……」
べつに俺は、ヒーローになったわけでもないし、有名人になったわけでもない。部活のレギュラーに選ばれたというだけだ。そのことがすごいことではあるけれど、それは努力を積み重ねている生徒なら誰にでもチャンスは巡ってくるはずだ。
──俺だけに限った話ではない。
「みんなで応援するからさ、頑張れよ!」
そう言うと、「な!」とあたりを見回してクラスメイトに同調を求める。
会話が全部丸聞こえだったのか、俺も俺も、私も私も、と瞬く間に同調される。その場の雰囲気は一気に明るくなった。
俺は空にでも昇るような気持ちになる。それほどまでに身体が軽くて浮いてしまいそうだ。
どこからともなく沸き起こる歓声に、終始俺は恥ずかしくてたまらなかった。
けれど、応援は嬉しかった。何か返してやりたいと思った。
だから、
「……おー」
小さな声で返事をするのが精一杯だった。