「自信ねえ……」

 今までは、自分に自信なんてものはなかった。空っぽで、むしろ後ろ向きな考えばかりで。

 俺が出たら迷惑がかかるとばかり思っていた。

「まあ、すぐに自信なんてつくもんじゃないと思うけどさ、監督にそれだけ認められてるんだ。少しは自信もってもいいんじゃね」

 ぽっかり空いていた胸の奥の穴が、そうっと静かに埋まった。

 ──そうか、俺。

 誰かに認められたかったのかもしれない。

 必要とされたかったのかもしれない。

「俺も、お前のこと」

 そう言いかけて、口ごもった瀬戸。

 口を覆って、目を逸らしたあと、

「一番のライバルだと思ってるし、いなくなったらつまんねーじゃん」

 恥ずかしそうに告げるから、聞いてるこっちまで恥ずかしくなった。

「……俺が、ライバル?」

 初めて聞いた言葉に動揺する。

「瀬戸が俺のことをライバル?」
「だからそう言ってんじゃん」
「ライバル……」

 感極まって思わず反芻すると、

「そんなに何度も言うなよ! 恥ずいだろ!」

 ベンチから立ち上がった瀬戸の耳は、真っ赤に染まって見えた。

 俺が、瀬戸にとってライバル……

 瀬戸の隣に俺はちゃんと並んでいた。

「──とにかくっ、俺はお前のこと認めてるんだからお前も自分のこと認めてやれよな!!」

 ビシッと指をさしたあと、俺を一人残して逃げるように去って行く。

 その後ろ姿をポカンと見つめたあと、

「……ありがと、瀬戸」

 俺、自分の気持ちにようやく気づけた。

 やっぱりレギュラーとして大会に出たい。

 それ一言に尽きたんだ。