「小牧、おまえは自分のことどう思ってるんだ」
「え」
「嬉しかったのに自分に自信がないのか?」
「そ、それは……」
図星をつかれて言葉に詰まった。
すると、
「俺は日頃のみんなの練習を見てレギュラーを選んだ。誰一人、贔屓したつもりはない。小牧が何を気にしているのか知らないが」
ゆっくりと言葉を紡ぎ始めて。
「お前は人一倍努力していた。それを一年間見てきた。みるみるうちに上達して、三年にも劣らないと思った。だからレギュラーに選ばれるに値すると思ったんだ」
レギュラーに選ばれて嬉しいはずなのに、同時に感じた不安、プレッシャー。
もっと適任が他にいるんじゃないかと思った。
でも、監督の話を聞く限り俺は贔屓されたわけじゃないらしい。ちゃんと実力を認められたのだろうか?
「だけど、小牧が少しでも不安があるようなら今の話を承諾してもいい」
今度は突き放すような言葉が落ちてくる。
「レギュラーに選ばれたいやつはたくさんいる。みんなレギュラーになるために日々つらい練習に耐えている。小牧の代わりなんていくらでもいるんだ」
辛辣な言葉が次々と現れて、一瞬にして俺の心は揺れ動く。
「大会まであと二週間しかない。自分が試合に出ることを想像できないのなら今ここで辞めるといい」
まさか、監督にそんなことを言われるなんて想像もしていなかった。けれど、きっとそれが正しいんだ。
「まだ公表はしないが、メンバーに知られないようにちゃんと練習だけはするように」
みんなレギュラーを目指して、バスケがしたくて、つらい練習に耐えてきた。俺だってそうだった。
けれど、今俺がここにいる限り、みんなの邪魔にしかならない。
メンバーが知ったらどう思うだろうか。
きっと俺の居場所はなくなるだろう。
──ほんとに俺は、何をやっても結果が出せないダメなやつなんだ。