俺の声は、体育館の壁に反響したあと溶けてすうっとなくなる。
──俺は、やっぱりダメだ。
レギュラーに選ばれたプレッシャーで、動揺してしまうなんて。
練習なんかしても意味ないんじゃないか。
もっと適任がいるはずだ。俺が早くこの席を譲れば……
「おー、まだいたんだな」
不意に聞こえた声にハッとして、恐る恐る顔をあげると、
「なーに辛気臭い顔してるんだよ」
そこにいたのは、瀬戸だった。
「……なんでいるの?」
今は、会いたくなかった。
──俺とは違う、瀬戸には。
「まだ小牧練習してるかなって思ってさ。ほらこれ、そこのコンビニで買ってきたんだ。食うか?」
そう言って袋の中から取り出したのは、アイスだった。
けれど、素直にそれを受け取ることがてきなくて。
「……いらない」
冷たく突き放してしまう。
瀬戸が悪いわけじゃないのに、俺の意思とは裏腹に勝手に動く身体。
「冷たくてうまいのにもったいないなぁ」
放置したボールを拾いに向かっている間に、一人アイスを開けて食べる瀬戸。
なんのために帰って来たんだよ、と心の中で棘を纏う言葉。
「そんなに今詰めて練習してると大会前にへばるぞ」
「ほっといてくれ」
「ほっとけって、お前なぁ……仲間なのにそれはないだろー」
呆れたように苦い笑みを浮かべる瀬戸に、なぜか少しだけもやもや、いらいらしてしまう。
その感情を煽るように、
「さっき注意受けたの相当ヘコんでんのか?」
的確に的をついてくるのがおもしろくなくて。
「……べつに」
かばんの上に無造作に置かれてあったタオルをつかみ上げると汗を拭う。
もちろん俺以外のメンバーも注意を受けていた。俺だけではない。が、特に多いのが俺な気がする。
つまり俺が一番レギュラーの中で下だということを意味しているようで。
どうして監督は、俺なんか選んだんだろうって疑問しか出てこない。
「気にするなってのは違うけどさ、落ち込むんじゃなくて、注意を受け止めつつ改善して前向くしかないじゃん」
もっともらしいことを告げられるが、それが俺の感情をさらに煽り立てる。
「だから俺、ヘコんでねーって」
なに勝手に決めつけてるんだよ。
「それならそんな顔すんなよなー」
アイスを食べ終えた瀬戸は、いつのまにか俺のそばへとやって来て、バシッと肩を叩くから、
「どんな顔だよ」
売り言葉に買い言葉で言い返すと、「どんなって……」目を白黒させた瀬戸はしばらくて。