──が、

「だが、自分に自信がないのが見て取れる」

 今度は俺の悪い部分を指摘される。

 まるで小さな棘が刺さったような痛みが胸にじわりと広がっていく。

「小牧は自分に自信がないからシュートを打つときも芯がブレる。だから、たまに外れるときがあるんだ」

 俺でも気がついていないシュートが外れる理由について的確に的をいてゆく。

「自信……ですか」

 俺は、自分に自信がない。とことん自信がない。むしろ後ろ向きなことばかり、不安なことばかりで。自分に自信が持てたことなんてなかった。

「そうだ。おまけに自分は目立とうとしないで、すぐにパスを回す。シュートを避けているようにも見える」

 淡々と告げられる言葉は、俺の心を見据えているようで。

 恥ずかしくて、情けなく思った。

「まあ要は、精神的な部分の問題だろう」

 ──そして、最後を締め括った監督。

 〝精神的な部分〟

 たしかに、そうかもしれない。

 レギュラーに選ばれた今だって、俺には自信がない。応援されることは嬉しいけれど、不安に押しつぶされそうになる。俺が大会に出て失敗したらどうするんだろうって、怖いんだ。

「あの……っ」

 咄嗟に思った。

 ──なぜ、俺をレギュラーに選んだのかと。

「どうした」

 尋ねようと思って、やめた。

「どうすれば精神的に強くなりますか?」

 代わりに、尋ねたのはそれだった。

 そんなの自分で考えろって言われるだけだろう、と予想していると。

「自信とは誰かに言われてつくものではない。おまけに精神的なものも自分でコントロールするしか方法はない」

 やっぱり俺が自分に自信なんて無理かもしれない、となかば諦めかけたそのとき。

「だが、自分に自信をつけるなら近道は一つしかない」

 と、前置きをした監督の言葉にゴクリと固唾を飲んでいると、

「それは自分で自分を認めてやることだ」

 たった一言、告げられた。

 それは具体的な例ではなかった。

「え……」

 自分で自分を認めることが自信に繋がるなんて、ほんとだろうか。内心、疑いしかなかった。

「何度も何度も練習して、失敗を繰り返して、自分に自信をつける。結局そこにたどりつくんだろうな」

 何度も練習して、失敗を繰り返して……

 そうすればみんなみたいに完璧な動きを身につけることができるんだろうか。

 俺は、自分に自信をつけられるのだろうか。

「大会まで残り三週間だ。その間、改善するところをしっかり改善して、悔いのないように全力を発揮すればいい」

 そう言ってポンッと俺の肩に手を置いたあと、他のメンバーの練習を確認しに行く。

 大会まで、残り三週間。

 その短い間で俺は強くなることができるのだろうか。

 それとも、

「……辞退した方が、いいのかな」

 レギュラーに選ばれた事の重大さに、少しだけ弱気になっていた。