*高校二年生の冬が終わる頃
 
 私は、ここにこれば、また彼に会えるのではないかと思い、前よりも頻繁に川を覗きに行くようになっていった。

 ふたりだけで刻んだ風景を、その度に思い出した。雪の上に微かに残る彼の足跡の気配の上に立ちながら。

長岡彩音(ながおかあやね)ちゃん?」

 後ろから私の名前を呼ぶ声がして、私は振り向いた。

 誰だろう。

「あ、急にごめんなさい。私ね、翔の姉です」
「あっ……こんにちは」

 初めて見る彼のお姉さんの顔。全体もそっくりだったけれど、目元が彼そのままだった。彼が眼鏡をかけて髪の毛をロングのふわふわにした感じ。

「そっか、ここであの子はダイヤモンドダストをみたんだね」
「……」
「あの子ね、普段自分の事を話さないのにね、さっき川で長岡彩音ちゃんとダイヤモンドダスト見たんだって、帰ってきてすぐに興奮しながら教えてくれたの。あぁ、私も一緒に見たかったなぁ」

 お姉さんは今、あの日、私がいた場所に立って川を眺めている。

「翔、何も出来なくてごめんね」

 そして、視線を変えずにすぐに空気に混ざり消えてしまいそうな声で謝っていた。


 私の心は現実に戻ってきた。
 あぁ、そうか、彼は本当に、もう……。