清水はもう気づいているはずだ。

自分が心美を好きなことをもうわかっているはずだ。

だから、
「ああ、そうだよ」

宏美は返事をした。

「心美がいるんだ。

お前も気づいている通り、俺は心美が好きだ。

だから、もう俺に執着をするのはやめて欲しい。

清水、お前が何度俺に自分の気持ちを伝えても俺の気持ちは変わらない。

もう俺のことはあきらめてくれ」

清水の目が大きく見開いた。

宏美は彼女の目をそらすと、その場から立ち去った。

教室に向かうと、心美がいた。

この場に誰もいないところを見ると、心美は自分が戻ってくるのを待っていたようだ。

「悪いな」

そう言った宏美に、
「いいの、気にしないで」

心美は笑って、宏美のカバンを渡してきたのだった。