モアイ像の視線が離れたことを確認すると、宏美はシャツの袖を通してボタンを留めた。

「傷跡って、どう言うことなんだ?

それらしきものは特に見当たらなかったんだけど」

そう言ったモアイ像に、
「ヤツに切られたんだ」

宏美が言った。

「き、切られた…!?」

恐る恐る聞き返したモアイ像に、
「ヤツは俺と仲がいい心美を逆恨みして、カッターナイフを持って心美に切りかかろうとしてきた。

俺はヤツから心美をかばって…」

その当時のことを思い出したのか、宏美の顔は苦しそうだった。

「刺された、のか…?」

モアイ像の問いに、宏美は首を縦に振ってうなずいた。

「幸いにも、傷は浅かった。

まあ…相手は女だったし、学生服を着ていたから助かった」

宏美は息を吐いた。