「…さすがに、傷跡はミヒロの躰に行かなかったらしい」

呟くように言った宏美に、
「…何の話だ?」

モアイ像は戸惑いながら聞き返した。

宏美は露わになった左側を指差すと、ツッ…と肩から二の腕をなぞった。

「この辺りに傷跡があったんだ」

宏美は言った。

「傷跡?」

モアイ像は悪いと思いながらも、宏美の露わになった肌を見つめた。

「気にするな、器は女だけど魂は男だ」

遠慮がちな視線を向けてくるモアイ像に向かって、宏美は言った。

「バカ、気にするわ」

モアイ像は言い返すと、宏美の肌を観察した。

陶器のように白くて触り心地がよさそうなその肌には、彼が言っている傷跡は1つも見当たらなかった。