「わからなかったんだ」

そう言ったモアイ像に、
「わからなかったんだ、それが」

宏美は返事をした。

「鈍いな」

「ええ、鈍いっすよ」

宏美はクスクスと笑った。

「まあ…今思えば、俺はあの時に心美のことを1人の女として意識をするようになったんじゃないかと思う。

その時から、心美しか見えなくなってた。

好きな人がいるのに、俺は何をしているんだろうって思った」

その当時のことを思い出したと言うように、宏美はやれやれと息を吐いた。

「当時の俺が目の前にいるなら、はっきりと言ってやりたい」

「何て?」

「未来の俺は神様の大間違いのせいで女になって生きているぞ、って」

そう言った宏美に、
「えっ、そっち?」

モアイ像は驚いて聞き返した。