(そいつ、バカなんだな。

と言うか、誰なんだろう?)

宏美は心当たりを考えてみたが、その中で思い当たったものは特になかった。

「宏美?」

心美が名前を呼んだ。

「何だ?」

返事をした宏美に、
「呼んだだけ」

心美が言い返した。

「おい」

宏美が怒ったように言い返したら、
「ぼんやりとしてる宏美が悪い」

心美はさらに言い返したのだった。

「別にぼんやりとしてねーけど」

何クソと言うように宏美が言い返したら、
「だったら、その鈍い性格を直してよ」

心美は言い返した。

「えっ?」

思わず聞き返した宏美だったが、胸の中のモヤモヤがすでに消えていることに気づいた。

 * * *