できれば、彼女がその告白に返事を出していないことを祈った。

「“ごめんなさい、おつきあいできません”って、言った」

心美が言った。

「えっ…?」

思わず聞き返した宏美に、
「よく知らない人だったもん」

心美は答えた。

「全く知らない人から“好きです”って言われても、こっちからして見たら“えっ?”って言う話なんだもん」

「まあ、そうだな…」

「それに…」

心美はまだ何か言いたそうだった。

「それに?」

宏美が続きをうながしたら、
「“他に好きな人がいます”って、言った」

心美が言った。

「はっ…?」

胸の中のモヤモヤが強くなったような気がした。

(ちょっと待て、俺は何にも聞いていないぞ…?)

そう思いながら、宏美は心美の顔を見つめた。