少ししてから、宏美は唇を開いた。

「俺の判断は間違っていたんじゃないかって思うんだ」

そう言った宏美に、
「どうしてだ?」

モアイ像は首を傾げた。

「心美は、俺を忘れられないでいる」

「…そうだろうな。

好きな人を忘れるのは、容易いことではないよな」

宏美は後ろのベッドにもたれかかった。

「――忘れて欲しいと思っているんだ」

宏美は言った。

「俺のことなんかもう忘れて、早く幸せになって欲しいと思ってる」

そう言った宏美の顔は、とても苦しそうだった。

「本人にも言った。

ミヒロとして、心美に言ったんだ。

“忘れてくれた方が宍戸さんにとって、いい供養になる”って」

宏美は天井をあおいだ。