解放されたとたん、大山はゲホゲホと咳き込んだ。

そんな彼に向かって、
「心美に何をした!?」

ミヒロは言った。

「――わ、私が…!」

心美が咳き込んでいる大山の前に立った。

「私が勝手に泣いただけだから…!」

そう言った心美に、
「えっ…?」

ミヒロは聞き返した。

「私が勝手に泣いただけだから!

大山さんは悪くないから!

と言うか、何もしていなければ何もされていないから!」

心美はまくし立てるようにしてミヒロに向かって言い返した。

「そ、そうか…。

それは、悪かったな…」

ミヒロが返事をしたことを確認すると、ミヒロはその場から走り去った。

「あっ、心美!」

彼女を呼び止めようとしたミヒロの声は聞こえなかった。