彼らの後ろ姿を見送った大山だが、心の中では引っかかっていた。

「まさかな…」

そう呟いたら、
「何の話?」

横から声が聞こえたので大山はそちらの方に視線を向けた。

「あっ、心美ちゃん」

心美だった。

彼女は『FEET』のヴォーカル・宍戸宏美の幼なじみで、恋人同士だった。

「もう大丈夫なの?」

そう声をかけた大山に、
「まだかな」

心美はそう返事をすると、口角をあげた。

「そっか…」

それに対して大山は、呟くように返事をすることしかできなかった。

「もう宏美のことを忘れた方がいいのかなって思うんだ」

そう言った心美に、
「えっ?」

大山は訳がわからなくて聞き返した。

「忘れるって、何で?」

大山は聞いた。