「ほら、できたぞ」

そう言ったモアイ像に、宏美は手鏡を覗き込んだ。

「おーっ、すごいな」

モアイ像の手によってアレンジされたお団子ヘアを宏美は気に入ったようだった。

「全然、鬱陶しくない」

振り返ってモアイ像を見た宏美に、
「それはよかった」

モアイ像はフンと息を吐いた。

宏美は手鏡をテーブルのうえに置くと、
「それじゃ、バイトに行ってくる」
と、椅子から腰をあげた。

近所のコンビニでアルバイトを始めたのだ。

「おう、行ってらっしゃい」

モアイ像が手を振った。

ショダーバッグの中にスマートフォンと折り畳み傘と財布が入っていることを確認すると、宏美は玄関へと足を向かわせたのだった。