「よろしくお願いします」

そう言った宏美に、心美は目をそらした。

「他のバンドに入ろうと思わなかった?」

そう聞いてきた心美に、宏美は訳がわからなくて首を傾げた。

「あなたみたいに美人で才能がある人なら、他のバンドでもやっていけると思う」

「それは、あたしが『FEET』のファンだったから…どうせなら、大好きなバンドのメンバーになりたいって思って」

「そんな中途半端な理由だったら、すぐに辞めた方がいいと思うよ」

宏美の言葉をさえぎるように、心美が言った。

「――あなたには、そこは似合わない」

心美はそう言うと、宏美の前から立ち去ろうとした。

「忘れられないからかよ!」

立ち去ろうとする彼女を呼びとめるように、宏美は言った。

「えっ?」

心美が訳がわからないと言った様子で振り返ったので、
(やってまった…)

勢いだったとは言え、自分の今の行動に宏美は両手で頭を抱えたくなった。