宏美は自分の首筋をさわっている黒髪を指でつまむと、
「なあ、切ってもいい?

うっとうしいし、暑くて仕方がない。

乾かすのだって一苦労だし」
と、馬に見せた。

「神様が悲しむからやめとけ」

馬は見事に一蹴したのだった。

「何だよ、ケチー」

宏美は口をとがらせた。

そんな宏美に対し、
「そう言うんだったら、明日からヘアアレンジをやらないからな」

馬が言った。

ヘアアレンジをしたことがない宏美のために、馬が毎朝のヘアアレンジをしているのだ。

「はいはい、すみませんすみません。

すぐに前言を撤回させていただきます」

面倒事が増えると厄介なだけなので、宏美はすぐに馬に謝った。

「はい、よろしい」

そう返事をした馬に、宏美は彼に気づかれないように息を吐いた。