「本当だよな」

「俺なら、そんなことは絶対にできない」

大山と小祝は首を横に振った。

「その日にライブに立って、椎名林檎の『罪と罰』を披露したんだけど…まあ、これがすごかった!」

興奮したように言った大山に、
「その曲って、歌うのがかなり難しいらしんだよな?

俺もコピーしてみようと歌ってみたんだけど、喉から血が出るかと思ったからすぐにやめたよ」

そのことを思い出したのか、小祝は自分の喉に手を当てた。

「彼女、途中で力尽きることなく最後まで歌いあげたんだよ」

「マジかよ!」

「マジなんだよ」

「はーっ、超ド級のモンスターが現れたな」

「その後も2、3曲とコピー曲を最後まで歌ったんだってさ」

そう言った大山に、
「…彼女の中には“限界”と言う言葉はないのか?」

小祝は恐ろしくなり、そう尋ねた。