「サビの部分だけでいい。

どんな曲でもいいから、少しだけ歌ってくれないか?」

宗助が宏美に言った。

「はい、わかりました」

宏美は返事をすると、深呼吸をして気を落ち着かせた。

唇を開けると、腹筋を使って、声を頭に響かせるようにして歌を歌った。

曲のサビの部分を歌い終えると、彼らが驚いた様子で自分を見つめていることに気づいた。

「すごいな…」

そう呟いたのは武藤だった。

「予想以上だろ…」

卓真は目を見開いた状態で宏美を見ていた。

言い出した本人である宗助は…と言うと、戸惑っていた。

「ソース」

そんな宗助に武藤はポンと肩をたたいて声をかけた。

「えっ…あ、ああ…」

宗助はコクコクと首を縦に振りながら返事をした。