「卓真の知りあいか?」

そう言ったのは、ドラムの武藤だった。

彼は宗助と同い年で、宏美と同じ学科に通っている先輩だ。

「いや、知らないけど…」

武藤の質問に答えたのは、ギターの卓真だった。

宏美とは1つ年上で、人文学科に通っている。

マッシュボブの髪は金色に染めているけれど、毛先だけは黒と言う変わった髪型をしていた。

宏美は生前に所属していたバンドメンバーの顔を見渡した。

当たり前だけど、特に変わっているところはなかった。

「――あの!」

宏美は彼らに向かって声をかけた。

「お…あたしをバンドのメンバーに入れてくれませんか?」

宏美は言った。

「えっ?」

「はい?」

卓真と武藤が驚いたと言うように声をそろえた。

宗助はポカーンと口を開けて、宏美を見つめていた。