卓真と宗助はそんな彼から視線をそらすように、宍戸宏美の遺影に目を向けた。

精悍な顔立ちをしているその遺影は、桜をバックにして微笑んでいた。

今年の春にサークルの仲間たちと出かけたお花見で撮影されたものである。

あれから、そんなにも時間は経っていない。

そのうえ、こんな形で彼の写真を使うことになるとは誰が思っていただろうか？

「だけど…本当につらいのは、心美ちゃんだろうな」

呟くように言った宗助に、卓真は遺影から祭壇の前で泣いている１人の女性――藤巻心美（ﾌｼﾞﾏｷｺｺﾐ）に視線を向けた。

喪服に身を包んだ彼女はハンカチで顔をおおって、グスグスと泣いていた。

「もうすぐで、結婚をするところだったんだよな…」

心美を見ながら、卓真は呟いた。

泣いている彼女に声をかける彼も、震えているその肩を抱きしめる彼も、もうこの世にはいない。