その声は、自販機のある方向から聞こえていた。

そっと顔を覗かせると、5人の男たちが自販機の前で話をしていた。

「『レインボーズ』だ」

彼らの顔を見た宏美は声をあげた。

「『レインボーズ』って、野球チームか?」

いつの間にか馬が自分の隣にいて、彼らを見ていた。

「いや、バンド名ですよ。

最初はメンバーが7人いたからバンド名を『レインボーズ』ってつけたらしいんですけど、就職とか学業の関係でメンバーが2人も抜けて今は5人になったんです」

そう説明をした宏美に、
「そのまんまかよ…」

馬は苦笑いをした。

「ああ、ヴォーカルのヤツが交通事故で死んだんだろ?

1ヶ月ぶりの出演らしいな」

「まだ心の傷も癒えてなければ、新メンバーも見つかっていないのに…」

宏美の胸がチクリと痛んだ。