「カホ、小祝さんに苦しい思いをさせてまで結婚をして欲しいと思っていないから」

そう言ったカホに、
「本当にそれでいいのか?」

父親は確認をするように聞いた。

「いいの、それでいいの」

カホは首を縦に振ってうなずいた。

「わかりました」

そう言った父親に、
「本当に申し訳ありませんでした」
と、島田は謝った。

「カホ、行こうか」

「うん」

婚約者父娘はこの場から立ち去ったのだった。

彼らがいなくなったことを確認すると、
「一択」

島田は小祝を呼んだ。

「ちゃんと頑張るんだぞ。

例え何年かかったとしても、ミュージシャンの夢をかなえるんだぞ」

「ああ、約束する」

そう返事をした小祝に島田は笑うと、この場から立ち去ったのだった。