「親父」

小祝は島田に視線を向けた。

「俺、やっぱりミュージシャンの夢をあきらめることはできない」

そう宣言をした小祝に、島田はもう驚かなかった。

「本当に悪いと思ってる。

親父の会社を継がなくて、申し訳ないと思ってる」

「そうか…」

島田は呟くように返事をした。

「本当に、ごめん!」

躰を2つ折りにして謝った小祝に、
「お前が決めたことなら、もう何も言わない。

自分が決めた道に進みなさい」
と、島田は言ったのだった。

それから島田は婚約者父娘に顔を向けると、
「そう言う訳なので結婚の話は…」
と、言いにくそうに言った。

「パパ、もういいよ」

カホは自分の父親に声をかけた。