ヒョイッと馬は宏美の躰…だったそれを抱えあげた。

「待って、それをどうするって言うの!?」

心美は馬に駆け寄ろうとしたけれど、
「彼の魂はもうあの躰にないんだ」

モアイ像にさえぎられてしまった。

「魂がないって…宏美は地獄に連れて行かれたって言うことなの!?

私たちが宏美の正体に気づいたから、宏美は…」

「あんな、第3者が気づいた場合は魂が地獄に行くことはないんや」

言いかけた心美をさえぎるように、神様が言った。

「じゃあ、どこに…?」

心美がそう聞いた時、神様はパチンと指をならした。

「――心美」

聞き覚えのある声が自分の名前を呼んだ。

ミヒロの低くて澄んだ女性らしい声じゃない。

ずっと、ずっと、聞きたくて仕方がなかった彼の声だ。