「どうやら、俺にはまだ寿命があるんだってさ。

少なくとも60年くらいはあるらしい。

間違えて死なせたお詫びとかで、俺は再びこの世で生きることになったんだ」

この場にいる全員が宏美の話に耳を傾けている。

「ありえないことはもちろんわかってる。

と言うか、俺が1番驚いてる」

自嘲気味に笑った宏美だったが、誰も笑っていないことに気づいたのでやめた。

「だけど、復活には条件があったんだ。

1つは、生前とは逆の性別で生きること。

俺は生前は男だったから、今は女としてこの世で生きてるって言う訳だ。

それから…」

宏美はそこで言葉を区切ると、
「周りに自分の正体を隠して、黙って生きること。

“宍戸宏美”は、もういない人間だから」
と、言った。