その場の空気が変わったことを嫌でも理解した。

「――宏美…?」

心美が名前を呼んだ。

両手で頬を挟み込むようにされたかと思ったら、彼女の方に視線を向かせられた。

「本当に、宏美なの…?」

自分を見つめているその瞳に、
「――ああ、そうだ」

宏美は首を縦に振ってうなずいた。

その答えに、心美は頬を挟んでいた両手を離した。

「どう言うことなの?

宏美は、事故で亡くなったはずでしょう?」

心美は訳がわからないと言った様子で聞いてきた。

宏美は髪を耳にかけると、
「神様の大間違いだったんだ」
と、言った。

「神様曰く、本当は違うヤツがこの世からいなくなるはずだった。

だけども、神様が人を間違えたせいで俺が代わりにこの世からいなくなることになった」

宏美は言った。