「椎名林檎と村下孝蔵と山下達郎が好きで、テコンドーを習っていて、その歌い方とかふとした時に見せる仕草がよく似ていた…いや、似過ぎていると思っていたんだ。

初めて出会ったはずなのに、もっと前からずっと一緒にいて活動していたような気がした」

武藤は話を続けた。

「最初はそれが何なのか、全くと言っていいほどにわからなかった。

どこかで君と会ったことがあるんじゃないかとそう思ってた」

そこで言葉を区切ると、武藤は宏美を見つめた。

「ミヒロちゃん」

武藤は首を横に振ると、
「いや…本当の名前を呼ぶならば、宏美くんかな」
と、言った。

「君は“日出ミヒロ”じゃなくて、“宍戸宏美”なんだろう?」

「――ッ…」

もう逃げることもできなければ、もうごまかすこともできない。

宏美は、そう悟ったのだった。