後ろ姿を見送ると、この場に沈黙が流れた。

「――あの…」

その沈黙を破ったのは、心美だった。

「大丈夫でしたか?」

それが自分に向けられた言葉だと気づいたのは数秒後だった。

「ええ、大丈夫ですよ」

宏美はミヒロの顔で言った。

「ミヒロちゃん、強いんだね」

そう言ったのは小祝だった。

「こう見えてもテコンドーをやっていましたから」

ニッと歯を見せて笑った宏美に、
「ああ、それでか…」

武藤は納得をしたように笑ったが、すぐに何かに気づいたと言うように表情を止めた。

「でも、ケガとかは…」

心美は確認をするために、宏美の左手をつかんだ。

「…えっ?」

それに気づいた心美の目が大きく見開かれた。