ドアを開けると、そこは自分が住んでいるマンションだった。

(本当に、俺の家だった…)

そう思いながらドアを閉めると、ジーンズの後ろポケットに自分の手を入れた。

そこに常に入っているのは、家の鍵だった。

いつものくせでポケットに触れたことに気づいた宏美だったが、そこから出てきたのはやっぱり家の鍵だった。

ドアに鍵をかけると、宏美は歩き出した。

空を見あげると、交通事故に遭った日と同じ雲1つない青空があった。

「キレイだな…」

そう呟いた後で、宏美は視線を戻した。

背中に触れている長い髪が歩くたびに揺れ動いている。

(少し…いや、かなり鬱陶しいな)

生前はそこまで髪を伸ばすことがなかったので、宏美はどうすればいいのかわからなかった。